特集記事

美容師の今と昔 厳しさの中で身についた、大切な力

美容師の今と昔

あの頃の環境が、今につながっているもの

気づけば、あの頃の話をする年齢になっていた

最近、
若い美容師と話していると、
ふと自分の20代を思い出すことがあります。

昔はこうだった、
と言いたいわけではありません。

ただ、
今の環境と比べると、
あまりにも違いすぎて、
整理しておきたくなることが増えました。

今回は、美容師の今と昔について、
あくまで僕自身の主観で書いてみようと思います。


美容師=ブラックと言われていた時代

僕が20代だった頃、
美容師の仕事は、
今でいうところのブラックな環境でした。それはつい最近まで業界では続いていたのも事実なんですけど。

長時間労働。
低賃金。
厳しい上下関係。

今の基準で見れば、
完全にアウトだと思います。

でも正直に言うと、
当時それを
強く嫌だと感じていた記憶はあまりありません。


比べるものがなかったから、疑問も少なかった

理由はシンプルです。

ネットがなかったから。

他の店がどうなのか。
他の業界はどうなのか。

比べる材料がありませんでした。

だから、
それが普通だと思っていた。

今思えば、
不便ではありましたが、
ある意味では理にかなっていた部分もあったのかもしれません。


学びの中心は、いつも人だった

技術も、考え方も、
教えてくれるのは、
目の前にいる先輩や先生だけ。

動画も、検索もありません。

学び方を学ぶ、
という発想すらなかったと思います。

それでも、
仕事は覚えていきました。

というより、
仕事をしながら、人を見て覚えていた。


言葉にされないことを感じ取る訓練

あの環境で身についたものは、
技術だけではありません。

言葉の裏側を感じ取る力。
表情や間から意図を汲み取る感覚。

今思えば、
かなり高度なことをやっていたと思います。

でも当時は、
それが当たり前でした。

気遣い。
空気を読む力。
打たれ強さ。

すべてが、
仕事と一緒に育っていきました。


先輩に嫌われたら、学ぶ手段がなくなる

極端な話ですが、
先輩に嫌われたら、
教えてもらえなくなります。

だから必死でした。

どうしたら学べるか。
どうしたら認めてもらえるか。

学ぶといっても、
頼れるのは本くらい。

結局、
一番の学びは人でした。

人から学ぶことの重さを、
この時代に叩き込まれた気がします。


今の時代では、完全にアウトな話

同じことを今やったら、
確実に問題になります。

ハラスメント。
虐待。

言葉だけを切り取れば、
そう言われても仕方がない場面もあったと思います。

もちろん、
理不尽を肯定したいわけではありません。


それでも、失われてはいけないものがある

ただ、
あの環境だからこそ身についた力が、
確かにあったとも感じています。

それが、
前回書いた
隠れニーズを探す力
につながっています。

言葉にされない要望。
本人も気づいていない違和感。

それを想像する力は、
人と深く関わらなければ育ちません。


上下関係は、守る関係でもあった

これは美容師に限りません。

親子関係。
先生と生徒。
部活の先輩後輩。
会社の上司と部下。

どれも、
上の人の顔色を伺う構造がありました。

その代わり、
関係は濃く、
守られている感覚もあった。

良い面と悪い面、
両方があったと思います。


言葉の表面だけでつながる時代

今は、
距離を取ることが正解になりつつあります。

トラブルを避けるための関係性。
言葉の表面だけで成立するつながり。

それ自体が悪いわけではありません。

ただ、
人を見る力が育ちにくくなっているのも事実です。


美容師は、技術より先に人を見る仕事

美容師は、
技術職であると同時に、
人を見る仕事です。

表情。
言葉の間。
空気の変化。

それを感じ取れるかどうかで、
仕事の質は大きく変わります。


昔が正解、今が間違いではない

誤解しないでほしいのは、
昔が良くて、今が悪い
という話ではありません。

時代は変わります。
環境も変わります。

ただ、
仕事の本質は変わらない。

人と向き合うという一点は、
今も昔も同じです。


これからの美容師に必要な視点

昔のやり方をそのまま戻す必要はありません。

でも、
あの時代に育った感覚を、
どう残し、どう今に合わせるか。

そこを考えることが、
これからの美容師にとって大切だと思っています。


この連載で伝えていきたいこと

この連載では、
美容師が長く、無理なく続けていくために、
現場で感じてきたことを
少しずつ言葉にしていきます。

正解を押しつけるつもりはありません。

考えるきっかけになれば、
それで十分です。

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